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2024年06月27日
【第205回】九転十起「未経験のことに挑戦する! 」にこだわった投資
2019年旋盤加工機を導入しました。栄光技研ではODTプロジェクト名づけ、全社で進めている大挑戦です。
栄光スプリング㈱から、社名を変更し、対応できる部品を少しずつ増やしてきました。
このプロジェクトはお客様の‘困った’のお声から始まりました。当社で解決するためにはどうするか、あらゆる方法を考えました。そして未経験ではあるものの、設備を導入して、内製することを決めたのです。
なぜ、そう決めたのか、今回はその理由の一部をお伝えしようと思います。
2002年、当社は自動車業界への参入を果たしています。動かしたことのない機械を導入し、1年間試行錯誤し複雑な加工部品の量産に成功したのです。
当時の苦労話を社長や工場長から聞くことがあります。なぜうまくいかないか、半年以上わからなかった。やっと形になったと思うと、量産すると寸法が公差に入らない・・・。寝れない日が続いたと。
この時の経験と身につけた技術やノウハウが、今の栄光技研を支えています。逆に言うと、この時の挑戦がなければ、いまの栄光技研はないと思います。
知らないことを学ぶ。研究し試行錯誤する。小さな失敗を重ね、一つ一つ改善しながら大きな成果につなげる。この経験が会社を成長させてきました。
さらにさかのぼり、創業期のことです。他社ができないといった極小引きばねの量産に成功したことで、会社が軌道にのった歴史があります。栄光技研の歴史の中に、そして多くのものづくり企業の歴史に、このような初めての挑戦が大きな結果となったことがたくさんあります。
「やったことないからやりませんではなく、やったことないけれど挑戦してみます!」という文化です。創業より約50年の当社。新しいことに挑戦することを当たり前の文化とするべきだと考えています。
創業者の思いやこれまで会社を支えてくれた人々の尽力を忘れないためにも、必要なことだと思います。
そして会社の成長に人の成長は欠かせません。その成長にはある程度の負荷が必要だと感じています。だからこそODTプロジェクトのような大きな決断をするとき、私はこの取り組みが人の成長につながるか、を判断材料にします。
ODTプロジェクトで旋盤加工を任せている製造部Mさん。真面目・研究熱心・ものづくりが好きな努力家です。さらに成長してもらうために、自身の可能性を広げるために社内で誰もやったことがないことに挑戦してほしいと思っていました。
そして、プレッシャーの中やり遂げて結果を出す達成感を味わい、もっと自分に自信をもってほしいと。2024年現在、Mさんはしっかりその期待に応えてくれています。
私が、社員のことを考えるとき、必ずその将来を見つめます。彼らの良いところを伸ばせているのか?どんな経験が彼らに必要か?彼ら自身はどういう人になりたいのか?彼らが、我が子だったら、私はどうするのか?心配だけれど、一緒に仕事をしてくれている間にたくさん経験してほしい。失敗して自信をなくしてしまったら、フォローして前を向くまで支えればいい。そう考えています。ここまで読んでいると、我ながら、愛が重い・・(笑)
ですが、これが私の根底だなとも思います。私は人が成長する瞬間が最高に好きなのです。
私は会長が創業した会社に入社して今の仕事に就いています。一緒に働いてくれている社員もパートの皆さんも、同じです。
機械一台から創業。工場もない、家族だけで始めたばねメーカー。経営者として仕事をすればするほど、創業時のパワーの凄さを感じます。どれだけの熱量で会社を起こしたのか・・・
これからの会社を担う私たちは、守るために攻める勇気と強さを育んでいかなければならないと思うのです。失敗しても、つぎの大きな成功をつかめばいい。経営者だけでなく、一緒に働く全員とその気持ちを共有したい。だからこそ、ゼロからの立ち上げを経験して、一緒に栄光技研の歴史を刻んでほしい。
旋盤加工はもちろん新しい営業活動も、社会貢献事業も、社内で誰もやったことがないこと、他社の事例がないこと、だからこそ困難が多い。一見効率の悪いやり方のようにも思いますが、そう感じたらどうやれば効率よくなるか考える。考えて実行する。わからなければ調べる。類似例をまねる。
こういうステップを踏んで、成功することが大切だと考えています。その体験を自分ごととして体験した社員を育てることが強い会社にしていくことにつながると思うのです。そして、この人材育成が社会貢献につながっていれば嬉しいなと思います。
九転十起を座右の銘とされていた広岡浅子さん。つらい時広岡さんの残された言葉を読み返し、今の自分なんてまだまだと、気持ちを奮い立たせています。
「思い通りになるから頑張るのではなく、思い通りにならない世の中かだらこそ、自分の理想をあきらめず、九回転んでも、十回起き上がる。」
変化のスピードが速い今だから、心にくる言葉です。人は一人では、ここまで強くなれないかもしれない。でも会社で支え合えば、九回転んでも十回起き上がることができるのではないかと、私は思うのです。栄光技研をこういうしなやかで強い会社にしたいと思っています。
前例のないことをやろうとすると、残念ながら、社内外から反対の意見や文句をいただくこともあります。栄光技研に入社して、3年〜5年はそういう日が多かったように思います。これまでと違うことを受け入れてもらうために、社員や現会長・社長と話し合ったり、議論したり、仲裁にはいったり。私を含めた全員がそれぞれの立場で真剣なので、バチバチの火花が散ることもありました。私は何度も何度も、一人で悔し涙を流しました。ある社員の方と面談をしていた時、当社と30年以上のお付き合いのある事務機器関連会社の社長Nさんがメンテナンスにこられていました。
面談を終わって自分の席に着くと、「常務、あんなに嫌な役割、ようやってはりますよ。本当にえらいと僕は思います。」と言ってくださいました。いい会社にしたいという一心で取り組んでいても、文句や反対、批判が出ることはあります。しかし、私も人間なので、マイナス意見のシャワーを浴び続けると、心が弱ってしまいます。その社長の一言は、大雨の中でずぶ濡れの私に、そっと傘をさしてくれたような優しさに溢れていました。頑張っていれば、必ず見てくれる人がいる。前を向く力もくれました。
その頃に、「九転十起」という言葉と広岡浅子さんを知りました。九転十起を座右の銘とされ、炭鉱経営に挑み、成功されたあまりにも有名な方です。事業を進めながら、女子大学設立にも尽力されました。明治・大正の時代に、こんなにすごい方がいらっしゃったのかと感動し、手帳にこの言葉を記し、私の心の支えにしていました。当時のことを、営業部のAさんと話しながら、過去の自分に今の自分は負けていないか、自分を顧みました。
年を重ねていくなかで、過去の実績だけを語る人になりたくないと思っています。今もこれからも、挑戦している人でありたいと思うのです。幸い、できるかどうかわからないけれど、やりたいと思うことは、たくさんあります。この思いが枯れるまでは、経営者としても頑張れるかなと思っています。
私の人生のテーマの一つに、「70歳まで社会に必要としてもらうために、自分はどうあるべきか」があります。
仕事をさせてもらえるか、声をかけてもらえるか。健康であることは、一番大切なのですが、稼ぐ力だけではなく、必要とされるかというところを私は大切にしたい。
この大きな人生のテーマにも私は挑戦しています。日々小さく「九転十起」を繰り返し、時には一人ではなかなか起き上がれないことも・・・。そんな時は周囲に手をひっぱってもらい起こしてもらいます!(笑)転んだことがある人、それを乗り越えた経験がある人は社会に必要とされるのではないかなと感じています。大雨の中にいた私の心救ってくれたNさんのように、挑戦する人々を強く、優しく、いい感じに、応援できる人間になりたいと思っています。