ばねは長期間、使用すると形が変形してしまったり、折れたりする事があります。改善対策は様々ありますが、その内の1つである熱処理「低温焼きなまし」についてポイントをおさえながら説明します。ばね業界で使用されているテンパー処理は低温焼きなましです。
目次
低温焼きなましとは
低温焼きなましとは、ばねの特性の悪化を防ぐ処理です。専門用語ではテンパーやブルーイングとも呼ばれます。冷間成形を行うばねの熱処理として、最も一般的な処理です。硬鋼線やピアノ線のばねを低温焼きなましすると、青色が付きます。
低温焼きなましは、ばねが元の形に戻ろうとする力の除去や耐力の向上を目的とすることが多いです。ばねの場合、強度や弾性限度(元に戻らなくなる範囲・限界点)を確保するためには180℃〜500℃の温度域にて処理します。
低温焼きなましを処理する理由
低温焼きなまし(テンパー)によるばねの影響は主に2つあります。
①寸法変化
成形後とテンパー後のばねは各材質によって、寸法が変わります。ピアノ線・硬鋼線・オイルテンパー線のばねは縮み、ステンレス鋼線は拡がりが生じます。
②引きばねの初張力
引きばねの場合は、低温焼きなましにより初張力が低下するので、押しばねより低い温度で処理する場合があります。
各種ばね材料における低温焼きなまし温度と線径による処理時間の目安
低温焼きなましは主にピアノ線、硬鋼線では200〜300℃、ステンレス線では350〜450℃の熱処理を行うことで、さらに高弾性限度が得られます。
材料 |
温度(℃) |
線径(㎜) |
時間(分) |
硬鋼線・ピアノ線 |
190~300 |
0.38以下 |
10~15 |
300~375 |
0.4~1.25 |
15~20 |
|
炭素鋼オイルテンパー線 |
180~220 350~450 |
1.3~3.0 |
20~25 |
ばね用ステンレス鋼線 |
400~500 |
― |
― |
リン青銅 |
180~230 |
0.64以下 |
20~30 |
※あくまで目安であり、目的や材料メーカー等によっても異なる場合もあります。
栄光技研では、ベルトコンベアによる連続式とバッチ式の2種類の熱処理炉があります。加熱能力や作業性、環境性を考慮して最適な熱処理炉の選択が必要です。
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