ばねのへたりを低減するために、ばねの強度と耐久性を向上させる方法として主に挙げられるのが、セッチングとショットピーニングです。どちらもばねの熱処理の後に行う処理です。(ショットピーニングの詳細はこちら)
今回はセッチングについて詳しく解説します。
目次
セッチングとは
主にへたりが問題となるようなばねに対して、成形や熱処理が終わった最終工程の近くで常温にてセッチングという処理を行います。セッチングは使用するばねにさらに荷重を与える処理です。この時与える荷重は使用するばねの最大使用荷重以上の荷重をかけます。
セッチングの効果
セッチングを行うことで主に2つの効果が得られます。
1.ばねの耐へたり性が向上する
セッチングを200〜400℃で行うことによって、ばねの耐へたり性が飛躍的に向上します。これをホットセッチングと呼び、設計応力の高い自動車用懸架ばねや高温で使用されるエンジン用バルブスプリングなどに積極的に適用されています。
2.ばねの変形防止・疲労強度が向上する
加工後のばねには有害な残留応力が残っていますので、熱処理でできるだけ取り除きます。一方、セッチングを行うことで、ばねの表面全体に有益な残留応力を付与し、疲労強度がさらに向上できます。
セッチングの注意点
セッチングは主に押しばね(圧縮ばね)のへたり対策となるため、引きばねは一般的に行いません。セッチングを行う上で、次の2つの注意点があります。
1.ばねが塑性変形(元に戻らなくなる)を起こす可能性がある
セッチングによってばねが塑性変形(元に戻らなくなる)を起こすため、セッチング後はもとのばねの自由高さが低くなりますので、それを見越して設計する必要があります。
2.過度なセッチングは疲労強度を低下させるおそれがある
セッチングによる疲労強度の向上効果は、ショットピーニングに比べれば小さく、過度に荷重をかけると、ばねの疲労強度を低下させるおそれがあります
セッチングの価格帯
セッチングのコストについて、量だけでなくサイズや重量、セッチング荷重も影響します。使用する設備や段取り時間、作業時間、片付けの時間、場合によっては治工具の要否が決まります。
またセッチング時の動作についても、価格が変わってきます。こちらも量だけでなくサイズや重量、形状、セッチングを行う高さや荷重によって使用する設備が異なり、その設備の能力や設定に依存します。さらに動作方法も自動、半自動、手動などがありますので、セッチングを処理する際はコストも相談するようにしましょう。
(参照元 圧縮コイルばねのセッチングについて質問です。 – ばね専門家が回答!ばねっと君のなんでも相談室 | バネ・ばね・スプリングの東海バネ工業株式会社)
セッチングに向いているばねは主に線径が太く、高い応力を持った大型ばねを推奨します。
万が一ばねの線径が細いけどへたる、セッチングを行う場合コストが合わないといったばねについてお困りの方はぜひお気軽にお問い合わせフォームまたはお電話でご相談ください。