ばねの使用用途は様々です。使用される環境によっては、ばねが使用されている状態で力の変動がほとんどない状態のものと、ばねに力が繰り返し作用する状態のものとがあります。
今回はばねの設計方法を詳しく知らない方に向けて、1番シンプルであらゆるところに使われている押しばねの設計や押さえておくべき項目についてご紹介します!
実際にステンレス材を使用した押しばねを製造しています。
目次
押しばねの特徴
押しばねは、コイルばねの中でも最も広く使用され、多くの機械や器具で使用されています。製造方法はシンプルです。
材料の線をらせん状に巻き、ばねを圧縮する方向に力を作用させて使います。
引きばねやトーションばねに比べて、製造する際の必要項目が少ないため、設計ができ、製作費を抑えることが可能です。
押しばねの設計事例
押しばねはシンプルな形状ですが、ほんの少しの微調整で荷重に大きく差が出ます。栄光技研で設計した押しばねの事例をご説明します。
ご依頼内容は、睡眠時無呼吸症候群の方向けの枕を開発している会社様から、
「人の頭の動きを感知するセンサーの反応を高めたいのだが、うまくいっていない。そこでばねが、センサーの感知を助ける働きをしてくれるのではないかと思ったので、相談させてほしい」との内容でした。
(参考文献:睡眠無呼吸症候群について)
図面がなく、材質・線径・荷重の指定も無かったので、まずはサンプルを使用しながら、ばねについての大まかなポイントを伝えつつ、一緒にばねを設計していきました。
「枕で使用するならば、材質は錆びにくいとされているステンレス(SUS304-WPB)を推奨します。
頭の重さを〇kgとすると、ばね1本に必要な力は▢Nくらいがよいですかね~。」と提案していくと、お客様から「パイプの中にばねを入れて、そのばねで棒を押したいです。とりあえず、試作品を作って有効性を確認したいんです。」というご要望が出ました。
栄光技研では、ご要望や使用用途をお客様にお聞きしながら一緒に設計をしていきます。
当社の場合、製造部(ばね一筋45年のベテラン技術者がおります)と日頃お客様のニーズをヒアリングしている営業部が設計段階からチームを組みます。また梱包形態も提案できる場合は業務部も参加します。
チームで話をしているとき、営業部のあるメンバーが「このばねどうですか?」と商談で使用した別のばねを思い出し、線径0.8㎜ 自由長120㎜ 外径φ10㎜の押しばねを提供してくれました。
サンプルばねを製造部に計測してもらうと「△Nあるぞ。かなり強すぎるのではないかな?」とアドバイスを頂きました。
製造部からの意見、計測したバネをもとに、①荷重大 ②荷重中 ③荷重小を提案しました。3つの中から1つ選んでもらい、試作品として納品出来ました。
押しばねに必要な設計項目
押しばねに必要な条件は大まかに3つになります。下記3項目は公式がありますが、別のブログでご紹介します。
- 外径または内径
- 自由長
- 巻き数
分からなければ、お客様のニーズに対して細かく質問しながら、一緒に設計をしていきます。
押しばねを設計する上でのポイント
押しばねを設計する上で一番大切なことは、何のために必要かということを明確にすることです。用途がはっきりしなければ、必要な耐久性やばねの形状を決めることができません。
機能を考えて、コイルばねの種類を選択しましょう。
今回の事例の場合は「押しばね」でしたが、押しばねにかかわらず、ばねを設計するときは何に重点を置き、設定目標値とするのか明確にしなければいけなりません。ばねの用途の明確化は設計の第一段階といえます。
また設計する上で、お客様の要望が欠かせません。私たちも細かくヒアリングをしていきます。
図面が無い場合でも、応えれる範囲で大丈夫です!加工方法においては、最適な材料、線径、焼入温度・時間を考え、設計することでコストダウンへつなげることも可能です。
(参考文献:ばね 入門 日本ばね学会 日刊工業新聞社
はじめてのコイルばね設計 山田学 日刊工業新聞社
ばね 基礎のきそ 蒲久男 日刊工業新聞社)